マンション 震災後からの復帰へ やっと道が・・
東日本大震災からもうすぐ2年。
横浜市金沢区のマンションには今も爪痕が残る。
浮き上がった立体駐車場。住民同士が合意し、3月、復旧工事が始まる。
1989年に完成した「サウスウイング金沢」。
八景島シーパラダイス近くの埋め立て地に、6棟106戸の住民が暮らす。
2011年3月11日。「駐車場が船のようにぶくぶくと浮き上がった」。
妻の連絡を受け、深夜に帰宅した市職員の鈴木順弘さん(39)の目の前に、泥の海が広がった。
建築基準法はマンションを軟弱地盤から守るため、地盤対策を義務づける。
サウスも地中約50メートルの硬い地層に杭を打ち込んでおり、
建屋にはほとんど損傷がなかった。
しかし、対策を施していない建屋以外の敷地は波打ち、
地中に埋め込んだ機械式立体駐車場は1メートル以上浮き上がって使用不能になった。
20年以上暮らす会社員男性(57)は「なんでここだけ」と思った。
埋め立て地でも被害がない場所もある。
分譲した県住宅供給公社は「工事に欠陥はない。天災による不可抗力」と主張した。
同年9月、県のボーリング調査で、地下約3〜9メートルは砂と水が混じった状態で、
再液状化の可能性があることがわかった。
復旧工事の方針はすぐには固まらなかった。
当初、管理組合は地盤改良を目指したが、見積もりを依頼した業者は
「完全な対策には数十億円が必要」。
専門家の意見を聞こうと訪ねた地盤工学の大学教授は
「液状化対策は費用対効果から考えると非現実的」と話したという。
住民には年金生活者もいる。昨年2月に管理組合の理事長になった鈴木さんらは
「住民に新たな出費は頼めない」と判断。
十数年先に予定していた大規模修繕用の積立金を取り崩し、
市が震災後に設けた上限1千万円の補助金も使って、原状復帰する道を選んだ。
立体駐車場を撤去した後に平置きの駐車場を作り、道路を舗装する。
理事会の独断と言われないように、毎月1回、協議事項をまとめた紙を各戸に配布。
基本設計ができた昨年8月には、設計図をもって住民同士で敷地内を歩き回り、意見を募った。
昨年12月23日の総会。大規模な工事は区分所有法で4分の3以上の同意が必要だ。
3日前まで同意数が足りず、鈴木さんらが手分けして説得に回った。
結果、9割を超える賛成で修繕計画が了承された。
3男1女の父でもある鈴木さんは
「子どもを安心して遊ばせるためにも、きれいにしたかった」と話した。
工事の完成は8月だ。
県災害対策課によると、震災で横浜、川崎市で液状化被害が確認された。
横浜市金沢区の別のマンションでも敷地が隆起し、港北区小机町の民家が傾いた。
川崎市でも東扇島の道路や公園で砂が噴き出し、亀裂ができたという。
■「合意しやすい仕組みを」
新浦安駅(千葉県浦安市)から徒歩20分。
ゲストルームやカフェなど共用施設が充実する600戸の
分譲マンションでも、敷地が液状化した。
飛び出たマンホールの周囲をコンクリで固めるなど応急工事はしたが、
地面がひび割れて水が抜けた人工池や、でこぼこの舗道など手つかずの部分も多い。
(液状化で突き出たマンホール。応急処置で、
周囲をコンクリで覆った=千葉県浦安市)
住民の男性は「マンション住民は一消費者に過ぎない。
専門的な知識がない住民でつくる管理組合が復旧計画を立てるのは大変」と話す。
計画はまだ検討中で、「資産価値を守る対策を早く取らないと、
資金のある人ほど退去してしまう」と心配する。
埋め立て地が多い同市では85%の土地が液状化し、約3万4千世帯が被害を受けた。
同市で液状化被害を調査する明海大不動産学部の斉藤広子教授は、
復旧計画の決定に時間がかかるマンションは
▽被害が大きく、最適な液状化対策がわからない
▽戸数が多かったり年齢層がバラバラだったりで合意形成が難しい
▽管理組合の運営に不慣れ――などの共通した特徴があるという。
斉藤教授は「マンションは合意には時間がかかるが、
みんなの力を積み上げることもできる。建築の専門家やマンション管理士を顧問に招いたり、
課題を継続的に話し合える住民有志の専門部会を設けたりするなど、
合意しやすい仕組みを用意することが大事」とアドバイスする。
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