神戸市の再開発施設、不当な共益費徴収めぐり入居者が管理者を集団提訴

1995年の阪神淡路大震災で、甚大な被害を受けた兵庫県神戸市長田区。新長田駅周辺で最も賑わいを見せていた大正筋商店街も、店舗の約9割が焼失した。震災後、大正筋商店街一帯は神戸市主導で復興再開発事業が行われ、マンションと商店街が一体となった複合施設群「アスタくにづか(1〜6番館)」が建設された。

2012年1月、アスタくにづかの1〜5番館の店舗所有者52人が、「住宅と店舗の管理費の平米単価に格差があるのは、公平を求めた区分所有法に違反する」として、アスタくにづかの管理会社である新長田まちづくり株式会社(以下、まちづくり社)に総額3億880万円の過払い金返還を求めて神戸地裁に提訴した。原告団は、アスタくにづかのビル内に設置された防災センターをめぐり、「店舗所有者が住宅所有者の9倍の運営費負担を強いられているのは不当」と主張している。

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 まちづくり社は、1〜6番館にある9棟を3番館の防災センターで集中管理している。その運営費は、店舗および住宅の入居者から集める共益費によってまかなわれ、その額は共益費の半分を占めている。

 入居者は、02年9月に各区画を引き渡された時に、まちづくり社から「共用部分の負担は面積割り」と説明されていたというが、実態は異なっていた。

 例えば保安管理費で比べると、3番館では住宅全体で年間約300万円に対し、店舗全体で年間約2400万円も負担している。それとは別に防災センターの運営費として、店舗は専有面積の割合に対して9倍の負担を強いられている。区分所有法では、共用部分の負担は各専有部分の床面積割合に応じるのが原則であり、それは店舗・住宅で異ならない。当然、店舗と住宅の負担割合を9対1とする合理的根拠はない。このことについて、店舗運営者たちは承諾しておらず、事業主の神戸市も管理者のまちづくり社も、負担割合について店舗側に説明はしていない。

 アスタくにづかで店舗を経営するAさん(仮名)は、まちづくり社と神戸市について次のように語る。

「まちづくり社の説明は『神戸市が決めた割合に基づいて管理運営しているだけ。だから、お金も返さない』という言い分です。一方で神戸市は、『運営しているのはまちづくり社だから、まちづくり社と入居者で解決してくれ』と言っています」

●共益費のずさんな管理

 それだけではない。共益費について調べてみると、新たな疑惑が浮上した。

 設備管理費、保安管理費、清掃管理費、環境衛生費だけでなく、損害保険料、修繕費、水道光熱費に至るまで、すべての支出項目において、店舗の区分所有者から「管理運営費・諸経費」と称して15%上乗せした費用を徴収していたことが判明した。

 一般のマンションでは、区分所有者で管理組合を結成して役員を選出し、その役員が区分所有者の代表として管理・運営していく。ところが、アスタくにづかでは、この管理・運営を管理者であるまちづくり社が行っている。つまり、区分所有者ではない第三者が管理・運営しているのだ。

 アスくにづかの1番館から6番館それぞれに管理組合が存在しているが、それぞれの管理組合の規約には、「区分所有法に定める管理者は、新長田まちづくり株式会社とする」と定めている。

 神戸市は第三者管理方式を導入した理由について、「被災権利者の生活再建を最優先にして、第三者管理方式のメリットを生かして、権利者のビルの管理業務の負担を軽減するため」と説明している。

「これだけずさんな管理をしている上に、管理費は不当に高い。『購入した区画を自分たちで維持・管理できない入居者自身が悪い』というのが、まちづくり社の言い分です。しかし、ここは行政主導で再開発された施設です。民間と同じような理屈は通らないはずです」(Aさん)

 また、管理委託契約によって管理会社もまちづくり社となっている。アスタくにづかを一元管理しているまちづくり社は、管理者でありながら管理会社も兼務している。管理者と管理会社が同じという形態は、全国にもリゾート開発ぐらいしか例がないという。

 通常のマンションは、管理組合が管理会社と契約しているが、アスタくにづかは管理者が管理会社を兼務し、実質の管理業務をまちづくり社の筆頭株主であるイオンディライトに丸投げし、さらにイオンディライトも下請け業者に丸投げしているという。

 国土交通省は管理者方式の採用に当たっては、管理者が自らの関連会社に管理を専属的に任せる場合、是正を指導している。まちづくり社は自らの最大出資元に管理を丸投げしており、民法上の利益相反行為に該当する疑いもある。

●規約改正すらできない状況

 このような状況を危惧する入居者たちは、アスタくにづかの各棟の管理組合総会において、まちづくり社を管理者から解任すること、および管理会社の変更を求める議案を提出した。しかし、結果は否決となった。保留床の68.7%の議決権を持つ神戸市が反対したためだ。

 ここまで見てきたように、規約で管理者をまちづくり社とすることが定められており、規約を改正するしかないのであるが、神戸市が多くの議決権を持っているため、規約の改正すらできない事態が続いている。

 神戸市とまちづくり社の協定書では、「甲(神戸市)は区分所有者の権限を乙(まちづくり社)に委任する」となっており、神戸市は所有しているアスタくにづかの約6割の店舗をサブリースする業務と併せ、議決権もまちづくり社に委任している。

 これは一般の区分所有者の意思が反映されにくく、管理者であるまちづくり社の独断専行がまかり通る仕組みといえる。

 このような状況に至って、ようやく神戸市も事態収拾に動き出そうとしている。デベロッパーが店舗床を買い取ることを視野に入れた再編計画を、14年度中に策定予定だという。14年度当初予算案で、コンサルタント費用など2337億円を計上した。商店主たちにとっては、もはや限界のところまできており、神戸市は早急な対策が求められている。

 阪神淡路大震災の発生から19年が経過したが、いまだに被災地・神戸は復興のまっただ中にある。


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