沸き立つマンション市場 シェア争い激化、業界再編加速も

国内のマンション業界の勢力図が変わってきた。野村不動産が平成24年の新築マンション発売戸数でトップの座を奪い、今年もさらなる高みを目指しているからだ。これに対し、大京大和ハウス工業が同業他社を買収し、反撃ののろしを上げる。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」効果でマンション販売が活発化する兆しが見える中、上位争いで業界再編が加速する可能性もある。

 「年間6千戸を供給する態勢ができてきた。今後は年間7千戸も視野に入れる。首都圏のシェアは10%以上にこだわりたい」。野村不動産の中井加明三(かめぞう)社長は、28年3月期までの3年間のマンションなどの年間発売戸数目標について、社内でハッパをかける。同社の24年の年間発売戸数は前年比1147戸増の6181戸で、三井不動産レジデンシャルを抜いて業界首位の座を奪った。野村の主力ブランド「プラウド」を立ち上げた14年の年間発売戸数は4千戸台で、10年間で1・5倍に増えた。同社の山本成幸常務は「高質感があるプラウドのブランドイメージが年々定着した結果」と振り返る。

 3LDKの分譲価格が5千万円前後の「プラウド」に加え、23年8月からスタートした価格帯が3千万円前後の新ブランド「オハナ」も好調に推移している。「中堅デベロッパーの撤退で、他社が手薄となった郊外のマンション需要を取り込む」(山本常務)のが狙いで、多様な顧客層に対応する「ダブルブランド戦略」が勝因につながった。

 25年の計画発売戸数について、2位の三井不動産レジデンシャル、3位の三菱地所レジデンスは、それぞれ5千戸台と見込む。6千戸台を掲げる野村不動産が独走しそうな勢いだ。ただ、不動産大手各社はこのままの状況が続くとは考えていない。少子高齢化が進行し、マンション発売戸数の増加は見込めないからだ。限られたパイを奪い合う構図が続けば、「いずれは大手を中心とした業界の寡占化が進むだろう」(不動産大手役員)との見方が強まる。

 “台風の目”となりそうなのは、かつてマンション発売戸数首位で、「ライオンズ」ブランドを展開する大京(24年は6位)だ。今年3月、業界中堅で「サーパス」ブランドを展開する穴吹工務店高松市)を307億円で完全子会社化すると発表。大京穴吹工務店の24年の販売戸数を合算すると4506戸となり、住友不動産を抜いて4位に浮上する。大京の山口陽(あきら)社長は「当社はかつて量を追って失敗した。(供給量は)潜在需要をみて判断する」と語るが、復権に向けて戦略を積み重ねる。

 また、近畿圏でマンション供給が多い大和ハウス工業(24年は5位)も4月、コスモスイニシアの第三者割当増資に応じると発表した。6月27日にコスモス株の64・11%を総額約95億円で引き受けて子会社化する。両社の発売戸数を合算すると4132戸で6位にとどまるものの、大手の一角に食い込む。大和ハウスの大野直竹社長は「コスモスは首都圏での事業が強い」と狙いを明かす。マンション供給の首都圏での割合を現状の25%から50%まで増やし、主戦場で優位に立つ戦略だ。

 不動産経済研究所によると、25年のマンション市場は前年比10・7%増の10万3900戸になると予想。過去最多の6年(18万8343戸)には及ばないが、リーマン・ショック前の19年以来の10万戸台の大台を回復しそうだ。今後は来年4月の消費増税を見据え、住宅の駆け込み需要が生じる。「消費者には『今が買い時』という心理が働く」(不動産経済研究所の松田忠司(ただし)・主任研究員)という流れもある。マンション市場はしばらく活況を呈する気配だ。

 松田氏は「耐震偽装事件や東日本大震災で、消費者はマンションに安心・安全を求めており、大手による寡占化の傾向はさらに強まる」と予想。別の業界関係者も「マンション購入の決め手として、地震対策が増えている」と指摘する。こうした消費者の需要をどれだけ的確にとらえられるかが、シェア争いの行方を左右することになりそうだ。

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