群馬県の管理不全マンション全調査 

マンションコミュニティ研究会(廣田信子代表)は1月23日、
第17回「マンションコミュニティ研究会フォーラム」を開き、
地域再生研究所の松本恭治氏(元高崎健康福祉大学教授)が
「都市居住の多様な未来〜マンション再生はコミュニティ再生から〜
」と題する講演を行った。


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 松本氏は、自ら丹念に調査した群馬県内全域からリゾート物件を除く
マンションの機能不全を起こしている物件の実態を示すとともに、
大半が女性の年金生活者が犯罪の巣窟と化したマンションを再生、
大規模修繕を実施して「ヤクザも恐れる集団に成長」した事例なども報告した。

 マンションコミュニティに関心が高まっていることを背景に参加者は
約50人にのぼり、職業もマンション管理士や管理組合理事長、
自治会長、管理会社、県会議員、学者、マスコミなど多岐にわたった。


 マンションであろうと戸建てであろうと分譲であろうと賃貸であろうと
「空き家」が増加しているのは言われなくても分かっている。
住宅ストックが世帯数を上回り、量から質への転換が叫ばれてから40年も経過する。
高崎などという地方都市でマンションの空き家が多数発生しているのは容易に推測できる。
記者も昨年、人口が最盛期より40%以上も減少し、
高齢者人口比率は30%を突破し、55歳以上の人口比率が50%近くにのぼっている、
限りなく「限界集落」に近いある地方都市の1,750戸もある
戸建て分譲団地を紹介したことがある。

 松本氏が添付した資料をみて考えは一変した。
頭をどやされたような気がした。
よくもこれまでノー天気な「マンションは管理を買え」などの
記事を書いてきたものだと反省もさせられた。

 松本氏は、自宅のある都内多摩地区から大学のある高崎まで
片道1時間30分かけていたそうで、その間、242件ものマンションを
しらみつぶしに調査したという。調べ上げるまで数年間かかったそうだ。

 そして、全マンションの1割に当たる25件の管理不全マンションをあぶりだした。
調査項目がまた詳細だ。竣工年、管理費・修繕費の有無、滞納の有無、管理体制、
空家率とその特徴、駐車場の有無、階数、エレベータの有無、大規模修繕の有無、
競売の有無とその件数、管理人の有無、事故・事件件数、
平均居住面積、ゴミ置き場の状況など30項目にものぼる。

 調査がどれほど困難かは記者も多少は分かる。
数百戸のマンションの所有形態を登記簿でしらみつぶしに調べたこともある。
表札の有無や電灯がついているかどうかで売れ残りマンションの実態を調べたこともある。
しかし、「筆者が代表者に面接できた事例は11事例でしかない」と
松本氏もレポートに書いているように、1件1件の空家率の発生やら競売件数なども
調べるのは神業としかいいようがない。
よくも警察に突き出されなかったと不思議に思うほどだ。

 話を聞きながら記者はあの徹底したフィールドワークで知られる
民俗学者宮本常一と松本氏を重ね合わせた。
国交省も行政もマンションの管理実態の調査などを行っているが、
1件1件、このような詳細な調査など行っていない。
松本氏のような調査こそが必要で、大量の空き家発生、
管理不全を未然に防止し再生の道を探るヒントがここにある。


の調査資料を公開したいぐらいだが、松本氏の苦労を思うとそれはできない。
関心のある方は松本氏(電話:0424-58-1274)に直接聞いていただきたい。

 一つだけ胸が詰まるような松本氏の記述を以下に紹介する。

 「高崎市にある老朽化著しいSマンション(1975年165戸)は
長年犯罪の巣窟と言われてた。滞納者が3割を超えて管理組合機能が低下していたが、
このマンションの再生に取り組んだのは懇談を目的とした15人の単身老人会で、
女性が大半を占める。お互い挨拶も交わさなかった人々が立ち上がった最大の動機は、
グループ内で病院に入院した場合は交互に見舞いに行くこと、
死んだ場合は手ぶらでも焼香に行くこと。国民年金が多数派を占める老人たちが滞納一掃、
大規模修繕を唱え、大規模修繕を実施した。
社会的弱者と言われ自分もそう思うことが都合が良かったが、
今はヤクザも恐れる集団に成長した」

 「全戸空き家化したマンションで孤軍奮闘しているのはたった一人の持ち家居住者で、
国民年金生活者の女性である。ヤクザ・右翼・ウイークリー業者が覇権争いする中
、廊下に置かれた植木の花を見てやっとまともな人が住んだことを予感した」

 「Hマンション(1991年125戸)、長く総会も開かれていない
マンションの再生に取り組んだのは、投資で購入し、定年退職を機に移り住んだ所有者である。
相棒を見つけて2人で滞納金の回収に取り組んだ。
四面楚歌の状況であったが、いつの間にか庭へのゴミ捨てが減り、
花壇に花が咲くようになった。
2人の姿に陰ながら共感する人がいた。大規模修繕を20年目にして初めて行った」

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