住宅の地震対策は? 第3の選択肢に注目

住宅の地震対策は第3の選択肢に注目 命と暮らしを守る「制震システム」

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このところ、住宅需要が上向いているという。
2014年4月とも言われる消費税引き上げを前に、
マイホームを手に入れようとの動きが加速しているようだ。
家族の日常の暮らしのステージをできるだけ快適にしたいと考える人は多いが、
その大前提は「安心・安全」に他ならない。
折しも、阪神・淡路大震災から18年、巨大地震発生の可能性が指摘される中、
あらためて、住まいの地震対策を考えてみたい。建物倒壊被害を防ぐ

耐震工法も余震には弱い

 阪神・淡路大震災の死者は6500人近い。
その約8割は、窒息・圧死など建物倒壊の被害によるものだった。
犠牲者の多くが津波被害によるものだった東日本大震災とは、この点が大きく異なり、
直下型地震の危険性について、あらためて考えさせられるところだ。

 こうした実態を受けて2000年に施行された住宅品質確保法(品確法)では、
住宅の性能を表す指標の一つとして、3段階の耐震等級を設定。
最高等級の「3」は、
建築基準法に定める数百年に一度程度発生する地震力の1.50倍の力に対して、
倒壊・崩壊しない程度」の耐震性能を有するとされる。

戸建住宅で最も多く採用されている木造軸組み工法の場合、
柱と梁の間隔や耐力壁の大きさなどによって耐震性能が変わることになる。
品確法の施行、住宅性能表示の開始が、住宅の地震対策普及の契機となったことは間違いない。
耐震性能は、もはや戸建住宅のスタンダードと言える。
長い実績から工法が確立されていて、導入しやすいことも見逃せない。
 とはいえ、耐震工法にも弱点がある。一度の地震で倒壊はしなくても、
ある程度のダメージは避けられず、建物の強度は落ちてしまう。
さらに余震が襲うと、倒壊・崩壊の危険が一挙に増すのだ。
地震が必ず余震を伴うことを考えると、耐震工法が必ずしも万全の地震対策とは言えなくなる。
 一方、ビルなどの高層建築では、建物を地面に対してゆっくり大きく揺らすことで、
地震の揺れの力をいわば絶縁する「免震」システムが多く採用されている。
建物と地面の間にゴム製支承などを設置するものだ。
超高層ビルやマンションでは、免震システム採用をうたう物件が増えている。
ところが、戸建住宅への応用も可能とされるものの、普及は進んでいない。

戸建住宅にはハードルが高い免震システム

制震システムの登場で地震対策は新時代に

 その理由は、免震システムが期待通りの効果を挙げるための条件が厳しいことにある。…
まず、強固な地盤の上に立つ建物でなければならない。
埋立地などの場合、地盤改良や長大な杭打ちなどの基礎工事を施す必要があり、
その場合コストは大きく、工期も長くなってしまう。
また、隣接する建物と一定の距離を設けることも必要だ。
免震システムが働いて建物が地震の力を吸収する方向に動いたとき、
隣接する建物と接触しないためである。
戸建住宅の場合、周囲に物置を建てることは難しくなるし、
増築などにも制約が出てくる。
そのうえ、免震システム自体の価格が高い。

戸建住宅1戸当たり300万〜500万円程度の負担を見込まなければならないのだ。
免震システムの戸建住宅への導入は、ハードルが高いと言わざるを得ない。
 そこで注目を集めているのが、いわば第3の選択肢である「制震」の考え方だ。
実は、揺れを抑える制震は、以前から橋梁で採用されている。
長大な斜張橋は風による揺れに常にさらされるリスクをはらむが、
それでは橋上をクルマや列車が安全に走行することができない。
そこで、橋の要部にダンパーを搭載し、揺れのエネルギーを吸収して、
橋の姿勢を保つのだ。

こうした制震技術が完成したからこそ、
長大な斜張橋を架けることが可能になったともいえる。
 戸建住宅への制震システム搭載のメリットは、
なんといっても取付け施工が簡便なことだ。
従来型の木造軸組み工法の建物でも、
壁の一部に制震システムを設置するだけで十分な性能を得られる。
しかも、繰り返しの揺れに強く、余震に対しても建物の強度維持を期待できる。
コストも免震工法とはひとケタ違う低さで、システム搭載による工期の延長もほとんどない。
制震システムの登場で、戸建住宅の地震対策が新時代に入ったといっても過言ではないだろう。

在来工法でも簡単に施工できる制震システム

周知徹底と普及拡大に期待

 戸建住宅への制震システム搭載は、
大手ハウスメーカーのオプション仕様からスタートした。
ところが、リリース時の反響は大きかったものの、
東日本大震災以前の搭載自体はそれほど進まなかったという。
制震システム「MIRAIE[ミライエ]」を開発した住友ゴムの松本達治氏に話を聞いた。

「制震」と聞いても、それが何を意味するか、
正確に理解できる生活者はいまだ多くないのでは、と松本氏は分析する。
また、わが国の戸建住宅の着工数の中で
ハウスメーカー大手が占めるシェアは20%程度であり、
認知に広がりを欠く原因になっているようだ。
もともと低コストな制震システムがさらに手頃になること、
メーカーを選ばず地域のハウスビルダーの手による在来工法でも簡単に施工できることが求められている。…

 今後、制震システムの搭載が増えるためには、地震国日本で命と暮らしを守るための、
戸建住宅における切り札であることを広く知ってもらう必要がある。
松本氏は、「実物大住宅を用いた実験を目にすれば、
理屈抜きに効果と必要性を実感できるのでは」と感じている。
確かに、論より証拠。
振動実験台の上で、繰り返す揺れに耐力を失っていく耐震建物と、
姿勢を失わずに耐力を維持する制震システム搭載の建物の比較を目の当たりにすれば、
その有効性と必要性を実感できるはずだ。
 2012年末に発表された地域別の震度6弱以上の地震発生確率は、
前年に比べおおむね高くなっている。
耐震・免震・制震と地震対策の選択肢が広がったことは歓迎すべきことだ。
それぞれのメリット、デメリットを理解したうえで、
マイホーム購入に当たっては地震対策を万全にしたいものである。

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