マンションの地震保険は保険料に見合うだけのメリットがある?

東日本大震災をきっかけに地震保険に加入する人が増えているようだが、
実はマンションの地震保険には制度上の問題も少なくないという。
日本マンション学会がこのほど発表した改善案から、問題点を探ってみよう。

ライフラインやエレベーターは保険の対象外

マンションの地震保険は基礎や柱などの共用部分の保険と、
各住戸の室内にあたる専有部分の保険に分かれている。

共用部分の保険はマンションの管理組合が加入し、
専有部分の保険はマンションの所有者が個人で加入するのが一般的だ。
東日本大震災では共用部分が損傷したマンションに地震保険の保険金が支払われ、
復旧の合意形成がスムーズに進んだケースも少なくなかったという。

だが、課題も浮き彫りになった。
共用部分の損害認定が基礎や柱などの「主要構造部」を中心としているため、
水道管やガス管などのライフラインや外壁、エレベーターなどの損害が
認定の対象外となるケースが続出したのだ。
また専有部分には損害認定の基準が定められておらず、
建物全体の被害に準じて査定されるため不公平が生じやすかったという。

そこで一般社団法人日本マンション学会では、共用部分の地震保険ライフラインや共用設備、
非構造の外壁も対象とするタイプを設けて従来のタイプと選択制にすることや、
専有部分の損害認定基準を作成することを提案した。

同学会会長の小林秀樹千葉大学大学院工学研究科教授は次のように話している。
東日本大震災では主要構造部に大きな被害がなくとも、
構造壁でない外壁やライフラインが損傷して生活が困難になるケースが多く発生しました。
また共用部分に大きな被害がなければ専有部分も十分に損害認定されない現状を改め、
個別に査定する仕組みの導入も不可欠です。
現行の地震保険は主に一戸建ての被害を想定しており、
もっとマンションの実態に即した制度に改める必要があります」

財務省のプロジェクトチームは制度改善に消極的!?

こうした提案も踏まえ、財務省では地震保険制度に関するプロジェクトチームを設けて
制度の改善を検討していた。だが、2012年11月30日にまとめられた報告書では、
マンションのライフラインなどを損害査定の対象とする案について、
一戸建てとの公平を損なうとの観点から慎重であるべきとの見解が示された。

ただし、高層マンションのエレベーターなどマンション固有の設備については
査定対象に加えることも考えられるとしている。
また専有部分の査定基準などについては、
将来的に一戸建てとマンションの地震保険を別建てとする可能性も含め、
引き続き検討していくとして結論を先送りした。…

プロジェクトチームが提起しているのは、建物の耐震等級による保険料の割引率の引き上げだ。
現行では最大で3割引きだが、耐震性の高い建物の場合はもっと
大きく保険料を割り引こうという内容となっている。

ただ、耐震性の高い建物はそもそも地震で被害が出にくいため、
地震保険が下りにくいケースが多い。
東日本大震災でも、特にマンションの場合は最も耐震性が低いとされる等級1の建物でも、
大きな被害が出るケースはごくわずかだった。
マンションの地震保険料は一戸建ての半額ほどだが、
それでも東京都や静岡県などは保険金額1000万円あたり年額1万6900円かかる(割引なしの場合)。
それだけのコストをかけて保険に入っても、いざというときに保険金が下りないのであれば
保険に入る意味があるのかどうかさえ疑問が残るだろう。


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