タワーマンションは「ヒエラルキー発生装置」でもある

電車で通勤中、外を眺めると駅前にニョキニョキとタワーマンションの建設が進んでいる・・・という光景はもはやすっかりお馴染みであろう。かくいう筆者も現在は都内のタワーマンションに住んでいる。

ニューヨークをはじめとした世界の大都市と違って、地震リスクなどの要因から高層マンションに住む習慣がなかった日本では、本格的に建設ラッシュが始まったのが1990年代後半以降と、その歴史は浅い。しかし、実際にタワーマンションに住んでみると、社会のヒエラルキーの一端が垣間見えてとても興味深い。

タワーマンションの値付けは、当然ながら上の階に行くにしたがって高くなっている(しかし、単純に階やサイズだけではなく、たとえば「東京タワーが見える」とか「レインボーブリッジが見える」、「年に一度の花火大会が見える」といった景観価値など、様々な条件で細かく値段が決まっているのも面白い)。したがって、住人同士がエレベーターで顔を負わせる頻度が比較的多いタワーマンションでは、下の階の住民は上の階の住民に対してヒエラルキーの感覚を抱きやすいという現象が起きるのだ。

実際、エレベーターで自分よりも上の階に住む人と乗り合わせると、不思議なことに「上の階の住人オーラ」を感じてしまう。「見える化」された高低の格差が原因だろう。特に社会で常にヒエラルキーに晒されている男性が相手の場合はこの傾向が顕著である。

タワーマンションの構造と値付けは、人間の「見栄」に基づく心理的ヒエラルキーを発生させる装置となるのである。こうした「ヒエラルキー発生装置」は他にもたくさんある。

たとえばファースト・ビジネス・エコノミーと分けられた飛行機は、同じ地域に向かって空を飛んでいるだけなのに格差を感じてしまう。フェラーリのような高級車も、一般道を走るだけならあんなスペックやスピードは必要ないと分かっているのに、隣を追い越されると格差を感じてしまう・・・などなど。

こうした「装置」は、サービスを提供する側には価値の多様化によって利益を追求する機会を生み出す。一方の利用者の側には、望むと望まざるとにかかわらず、収入格差というヒエラルキーに基づく社会の縮図を強く意識させる効果をもたらしている。


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