社説:老朽マンション 建て替え推進だけでは

古くなってきたマンションをどうするか。住民の高年齢化が進んでいる。建て替えか改修か。建て替え資金が十分あるケースはまれだ。分譲マンションの購入者が数十年後に直面する難題である。政府は老朽化マンションの建て替えを後押しするため、容積率の緩和などの具体策を今年度中に決めることを盛り込んだ規制改革実施計画を閣議決定した。

 しかし、物件の条件がよほど良くないと建て替え費用の負担が重くなる。さらに、建て替え決議には所有者の5分の4の賛成が必要で、なかなか意見がまとまらない。極めて高いハードルがあるのだ。建て替えを推進するだけでは急増する老朽化マンション問題の解決は困難だ。政府は建て替え以外の議論も深め、総合的な対策の検討を始めるべきだ。

 マンションは1950年代以降に分譲が始まった。今では全国で約590万戸ある。このうち築30年以上は約130万戸にのぼる。ところが、これまで建て替えられたのは累積で約180件(1万2000戸)に過ぎない。敷地が広い旧日本住宅公団の団地や、都心部で極めて立地が良い物件で、戸数を増やして建て替え、それを売却して住民の負担を少なくできたケースが大半だ。

 現在、東京都には公共の空地の確保などの条件を満たせば容積率を緩和する制度がある。今後、政府はそれらも参考に具体策を検討する。マンションの建て替え決議の要件の緩和なども検討される。

 それでも、ほとんどが建て替えられず取り残される見込みだ。政府は長期修繕計画のガイドラインを示すなど建物の寿命を延ばす取り組みをしてきた。加えて、専門業者によるリフォーム後の再販売や、取り壊して売却し他の用途に使われることも視野に入れ、幅広い対応策を議論する時期だ。管理組合の活性化や機能強化も今まで以上に大事になる。

 耐震化という問題もある。今の耐震基準は81年6月以降に建築確認を受けた建物に適用されているが、それ以前の建物は、耐震性に問題がある物件が多い。今国会で耐震改修促進法が改正され、旧耐震基準で建てられた病院やデパートなど人の出入りの多い大型施設には耐震診断が義務づけられた。結果も公表される。一方、マンションなど住宅は耐震診断と耐震改修が努力義務とされた。

 東京都が2011年に実施したマンション実態調査では、都内の旧耐震基準の物件で、耐震改修したとの回答は分譲で5.9%、賃貸で3.4%に過ぎなかった。努力義務でこの比率がどこまで上がるだろうか。直下型地震の切迫性が指摘されている。耐震化の推進を含めた老朽化マンション対策が迫られている。


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