マンション管理の極意 信頼できる管理会社の見分け方

かつてマンションは一戸建てへのステップととらえられてきた。
しかし、右肩上がりの不動産神話が崩壊したことやライフスタイルの変化から、
分譲マンションへの永住志向が強まっている。
今や日本のマンションの住民は1400万人に及ぶ。
ついのすみかとなれば、快適で安全、そして資産価値も下がらないマンションであってほしい。
そうした万人の願いに応えるカギが質の高い「管理」である。

マンション管理の主役はあくまで管理組合だが、
実際にさまざまな業務を行うには管理会社の力を借りることになる。
第1回は、質の高い管理をサポートしてくれる管理会社の見分け方をレポートする。

丸投げが馴れ合いを生む
主役はあくまで管理組合

 マンションが一戸建てと大きく違う点のひとつは、
管理会社が毎日の清掃をはじめいろいろな業務をやってくれることだろう。
実際、国土交通省の「マンション総合調査」(平成20年度)では、
マンションの管理状況全般に「非常に満足している」「やや満足している」という
人は合わせて6割を超え、その理由として一番多いのが
「マンション管理業者がよいので」(55・4%)というものだ。

 しかし、管理会社にすべて任せておけば大丈夫かというと、そんなことはない。
5年前、川崎市内で新築マンションを購入したYさんは昨年、
自ら役員に立候補して理事長に就任した。
管理組合の総会で、管理会社の姿勢に疑問をもったのがきっかけだった。

「住民の一部がいろいろ質問しても、
担当者は椅子に座ったまま木で鼻をくくったような返事。
顧客志向の姿勢がまったく感じられなかったのです」

 Yさんが感じた疑問はその後、具体的な問題として現れた。
過去の支出をチェックすると、不明朗な領収書が次々に出てきたのである。
ほかにも管理会社の担当者(フロントマン)に頼んだことがなかなか実行されていない。
実は、管理組合の役員もそれまで、ほとんどチェックしていなかったのである。

 Yさんは管理会社をきちんと監視するか、
別のところに替えるかのどちらかしかないと考えたが、
住民の中には売主系列の管理会社のほうが安心だという声も根強く、
管理会社の姿勢が変わればそれでいいと判断した。
ただし、管理会社に支払っている委託費の水準が相場に比べて高いかどうかは
確認しておこうと、外部の専門家に聞いたところ、2割ほど高いのではないかと言われた。

何か問題が起こって初めて管理の重要性に気付く

「業務対応がいいとはとてもいえませんが、それでも委託費が安いなら仕方ない。
しかし、対応は悪い、コストは高いというのでは話になりません。
そこでまず、委託費が安くならないか交渉しました」(Yさん)。

 すると「うちは一所懸命やっている。理事長が勝手にそんなことをやっていいのか」
と高飛車な返事で、徐々に他の役員もおかしいと思うようになった。
Yさんたちはその後、住民へのアンケートや説明会を行い、
最終的にリプレイス(管理会社の変更)に踏み切ったのである。

 分譲マンションでは、管理に関する様々な意思決定にしろ費用の負担にしろ、
主役は一人ひとりの購入者、そして購入者全員がメンバーになる管理組合だ。
管理会社はあくまで、管理組合から頼まれて様々な業務を行い、サポートする存在にすぎない。

 ところが、管理組合といっても実際に活動の中心になるのは1〜2年任期で
持ち回りの理事や監事などの役員であり、その多くは仕事があったりして、
それほど時間が割けるわけではない。
また、マンション管理においては建築、設備、法律、財務など様々な専門知識が必要だが、
所有者の多くはこれについて素人だ。そのためどうしても管理会社に頼ることが多い。

 往々にして分譲当初から管理会社に丸投げし、そのうち慣れ合いに陥るのである。
それでも、普通に業務が行われていれば、住民の多くは気にせず、「こんなものだろう」
と思ってしまう。何か問題が起こって初めて、「これでいいのか」ということになるのだ。

生い立ちや経営姿勢で分類した
管理会社のタイプと傾向

 2001年に施行された「マンション管理適正化法」により、
マンション管理を事業として行う会社は国土交通省に登録することが義務化された。
2012年12月現在、登録している管理会社は2400社近くにのぼる。

 管理会社は分譲マンションの管理組合を顧客とし、管理費等の出納、管理員の派遣、
建物の清掃、設備の点検・検査など提供するサービスはほぼ同じだ。
基本的に労働集約型のサービス業であり、さほど大規模な設備投資が必要というわけではない。
そのため、大手から中小、零細まで多くの管理会社が存在する。

生い立ちやバックボーンで分類した管理会社のタイプ

 ただ、それぞれの生い立ちやバックボーンをみると、
デベロッパー系、ビルメンテナンス系、独立系など
いくつかのタイプに分けられ、強みや注意点など一定の傾向がみられる。

 たとえば、デベロッパー系は、マンションを分譲する不動産会社(デベロッパー)の
管理部門が分離独立してできたところだ。
親会社が販売したマンションの管理を安定的に受注できるため大手中心で、
名前が知られている会社も多い。
また、親会社が分譲したマンションの設計などに関する情報が入手しやすい。
逆に、資本関係上、親会社の意向に左右されやすく、
管理組合ではなく親会社の利益を優先するケースも見られる。

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ビルメンテナンス系はオフィスビルのメンテナンス業から展開してきたところだ。
建物や設備のハード面に関するノウハウや専門スタッフは豊富だが、
管理組合の運営サポートなどソフト面はやや弱い傾向がある。

 独立系は、特定の系列に属さない管理会社で中小が多い。
系列管理会社をもたないデベロッパーから受注したり、リプレイス(管理会社の変更)
を仕掛けたりすることで事業を拡大してきた。
低価格をセールスポイントにしているところが多く、立場も中立的といえるだろう。
ただ、低価格で業務の質が伴わなかったり、修繕工事の受注狙いといった傾向がある。

 こうした傾向を知っておくことは、管理会社を判断するひとつの参考になるだろう。
ただし、個別にみるとそれぞれ違いもあるので注意してほしい。



管理会社のレベルはここで見分ける


 どの管理会社がよいか悪いかは、なかなか一概にはいえない。
同じ管理会社でも、フロントマン(営業担当)によって、
業務の内容やレベルに差があることは珍しくないからだ。

 それでも一定の目安はある。
そもそもマンション管理を事業として行うには「マンション管理適正化法」に基づいて、
国土交通省に登録していることが大前提だ。

 会社ができてからこれまでの経歴や実績は、重要な判断材料の一つとなる。
歴史の長い会社はそれだけ安定性があるといえるし、
多く受託しているマンションのタイプを見れば、得意・不得意がなんとなく分かる。

 社内体制は、管理会社の実力をチェックするうえで外せないポイントだ。
たとえば人材の雇用形態。正社員、契約社員、業務委託などいろいろなケースがあるが、
一般論として正社員のスタッフのほうが、
コストは高いが業務の熟練度やモラルの点では安心できるだろう。

 フロントマン一人がどれくらいの管理組合を担当しているかも重要だ。
一人当たりの担当が多ければ、1件当たりの人件費は安くなるが、
その分、労力や時間はあまり割けないからだ。

 各種の研修制度、ITシステムの整備などにも注目したい。
研修制度がしっかりしていれば、それだけ人材の質が揃っていると考えられる。
また、ITシステムが整備されていれば、
担当者による質のばらつきをある程度、平準化できるだろう。

 いずれにしろ、マンション管理では当たり前のことを当たり前に
きちんとできるかどうかが重要である。

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重要事項説明書や契約書を
よくチェックする

 マンション管理適正化法では、管理組合と契約を結ぶ際や更新する際には原則として、
マンションの所有者全員に重要事項説明書を配り、
説明会を開くことなどを管理会社に義務付けている。

 記載内容は国土交通省の指針があるが、
細かい内容や説明の仕方をみると管理会社の体質がにじみ出ているものだ。
CS(顧客満足)を重視し、わかりやすく自社にとって不都合な点についても
あえて触れる会社もあれば、なるべくあいまでどうとでも取れるような記載、
説明で切り抜けようとする会社もある。

 たとえば、さまざまな業務の内容について、実施日や時間、
人数などまで細かく説明する管理会社は、現場をきちんと把握しており信頼できる。


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また、従前と同じ条件で契約を更新する場合、
理事長にだけ書面を交付して説明すればいいことになっている。
毎年変わる理事長が契約内容をよく確認しないまま更新していたり、
変更があっても覚書の形で処理し、契約書そのものは
元のままというケースがあるので要注意だ。

 管理組合の役員になる人はぜひ、
国土交通省が公表している「標準管理委託契約書」を参考に、
管理会社との間で結ばれている契約をチェックしてみるといいだろう。

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実際の現場の評価は
フロントマンや管理員がカギを握る

 管理組合にとって、管理会社のよし悪しは、実際には、
現場のフロントマンや管理員の質によって大きく左右される。

 フロントマンは通常、10数か所のマンションを担当しており、結構忙しい。
しかし、それに気兼ねする必要はない。
理事会には毎回出席しているか、定期的に巡回して点検や管理員の指導をしているか、
依頼したことについて迅速に期日通りに処理してくれるかなどをチェックしよう。

 また、同じ管理会社の中でもフロントマンの力量にはかなり差がある。
どちらかというと「うるさ型」の管理組合には、レベルの高いフロントマンを当て、
物言わぬ従順な管理組合には補欠クラスを回す傾向がある。
もし、問題が目に付くようなら、
管理会社に申し入れてフロントマンを変えてもらうべきだ。

 管理会社から派遣される管理員は、
日常的にマンションの清掃や受付などの業務を行っている。
定型的な仕事のように見えるかもしれないが、
実際には担当マンションの契約上の業務仕様を十分理解しつつ、
状況に応じて臨機応変に動く必要がある。
各社とも管理員はエリアごとの契約社員やパートが多いが、
レベルの高い管理員には管理組合として
気持ちよく長く勤めてもらうよう配慮するとよいだろう。


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