“モノ言う管理組合”を目指せ マンション業務を住民本位で改善

管理会社に委託しているマンションの管理業務を見直し、内容の改善やコスト削減を目指す居住者の取り組みが増えている。競争原理が働きにくいとされる管理会社に任せきりで、業務内容や住民が支払う管理費の水準が適正か把握できていないことが多いからだ。居住者の意識を高め、住民本位の管理業務を実現するポイントを探った。

 「管理の質が向上し、コストも3割近く減らせた。“モノ言わぬ”管理組合のままでは成果は得られなかった」と強調するのは、埼玉県内のタワーマンションで管理組合の理事長を務める鈴木一之さん(38)=仮名。この6月、完成以来6年間契約してきた管理会社の変更を決めた。

 250世帯以上が入るこの物件は、警備システムを手掛けるセキュリティー大手の系列会社に年間約3000万円で管理業務を任せてきた。

 今回、管理費や修繕積立金の徴収といった事務や管理人の業務を別の管理会社に変更。従来は管理会社を通じて下請け業者に発注されていた定期清掃やエレベーターの保守などの専門業務も、管理組合から各業者への直接契約に切り替え、管理費の削減といった形で年900万円近いコストダウンに成功した。

 鈴木理事長は「新築マンションの住民は管理業務の素人ばかりで管理会社の言いなりになりやすい。マンション全体の将来への危機感が背景にあった」と振り返る。

 こうした動きは東京や大阪など各地で増えている。専門家は、管理業務の改善には内容を決めるマニュアルともいえる「管理委託業務仕様書」の改定が必要と指摘。通常は内容が簡素で曖昧なものが多いからだ。これを具体的な項目を細かく盛り込んだ居住者主導の内容に変更する。

 例えば、「フロント担当者」と呼ばれる管理会社の営業マンが受け持つ事務管理業務。管理組合の議事録作成に提出期限を設けたり、未収納金の督促を電話、内容証明、使用権の差し押さえといった時系列順にマニュアル化したりして、担当者の怠慢を未然に防ぐ。

 管理人の巡回ルートや清掃場所・回数のほか、剪定する植栽の部位や実施時期も細かく具体化して、誰でも作業できるマニュアルとして作成することが管理業務の品質向上につながる。

 業務内容を明確にすれば管理費の値下げ交渉もしやすくなる。別の委託先への変更を考えるなら、競争入札も視野に入る。管理組合の要望に沿った形で複数の管理会社から業務の提案と費用の見積もりを取り、比較するのが有効。価格だけでなく、管理会社の経営状態も考慮する。

 マンション管理などのコンサルタント、須藤桂一さんは「管理会社は開発したゼネコンやマンション販売会社の子会社などが企業努力なしでなることが多い特異な業界。管理会社同士を競わせれば品質が向上し、適正な価格も形成される」と指摘している。

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