住民高齢化悩む「自主管理」 分譲マンション

長年、自主管理をしてきた分譲マンション管理組合の運営が、高齢化で行き詰まるケースが増えている。だが、管理会社への運営委託は費用負担が大幅アップするのが悩みだ。専門家は業務の分離発注によるコスト削減や、人付き合いの工夫で運営を活性化することなどを提案する。(林勝)

 「入居者の半数近くが高齢者。五年、十年後も自主管理を続けられるか心配」

 愛知県一宮市にある四十七世帯が入る築三十三年のマンション。管理組合を率いる自治会長の伴野幸一さん(68)は、組合運営に参加できる住民の減少に悩む。「毎年の総会でいつも話題になるのが、外部委託するかどうか」。隣のマンション管理組合も最近、委託に切り替えた。

 ただ、自主管理の魅力も捨てがたい。管理費を抑えられる上、敷地の合同清掃や自治会費の集金などを通じ、住民同士の関係が維持できる。高齢になれば健康面の不安が募るだけに、隣近所のつながりを保ちたいとの思いも強い。

      ◇

 NPO法人日本マンション自主管理組合支援センター(東京)にも、同様の相談が増えている。小倉裕美代表は「外壁や配管の老朽化などでいずれ大規模修繕が必要となるが、住民のコスト意識は乏しい。自主管理で管理費を抑え、修繕費に回してほしい」と話す。

 「管理会社への丸投げは高コストのもと。浄化槽の清掃や植木の刈り込みなど、地元の専門業者に分離発注すれば、かなり安くできる」という。委託から自主管理に切り替え、管理費を五割以上削減したケースも。「自主管理で住民意識が高まり、メンテナンスが行き届くと結果的に資産価値も保たれる」と指摘する。

 「こうした仕事を生き生きとこなす高齢者も多い。周辺地域とのつながりも強くなる」と小倉さん。介護や医療費の備え、生活不安の解消にもつながるという。

      ◇

 ただ、自主管理組合の運営の大きな問題になるのが、業務が特定の人に集中すること。本人の体力が衰えて疲弊したり、「皆やらないなら自分しかいない」と独善的な運営になってしまったりすることも。

 マンションのトラブル事例を調査してきた、地域再生研究所(東京)の松本恭治代表は「命令調で迫る高齢の組合役員がいる。こういう人は人材を育てるより、つぶしてしまい、いつまでも実権を握る」と語る。その結果、住民の気持ちが運営から離れてしまう。

 松本さんは「組合運営で対立があって困っている」との相談も受けることがある。「けんかがあるうちは互いにチェックが効く。救いようがないのは対立ゼロと無関心」と指摘。このとき、住民モラルの乱れが最も起きやすいという。

 松本さんは「皆で酒が飲めない組合は必ず駄目になる。女性も参加しやすい行事などで親睦を深め、前向きな意見を持っている人を見つけ、責任を与える。そうやって人を育てるのが大切」という。「そのためにも元気な高齢者は他人の生き方を認めつつ、周りのために動くことです」



●複数の管理会社から無料で一括見積
マンション管理費削減ドットコム⇒http://kanrihi-sakugen.com

●管理費削減、大規模修繕のコンサルタント
プリンシパル総研⇒http://www.principal-gc.com


http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2013072502000127.html