【必見】コスト削減から契約解除まで、管理会社に負けない交渉術。管理費見直し・管理費削減・管理会社変更まで

コスト削減から契約解除まで管理会社に負けない交渉術

管理費の削減は多くのマンション住民にとって、関心が高いテーマである。
管理会社が管理委託費の削減に応じなければ、
契約を解除してほかの会社に切り替えることも選択肢の一つだ。
ただ、価格だけで委託先を決めると失敗する。質とのバランスが大切だ。
シリーズ第2回は委託費削減の交渉術、後悔しないリプレイス(管理会社の変更)の方法、
上手な付き合い方などを探ってみよう。


■近隣の同じ売主の物件と
 管理費を比較してみる

管理組合にとって、ぜひ頼りにしたい管理会社だが、
何もかもお任せではうまくいかない。
必要に応じてきちんと交渉する術も必要だ。
実際によくある交渉の一例が管理費の削減である。

横浜市北部にあるRマンション(全39戸)が完成したのは
2010年3月のこと。それからわずか半年で、
Rマンションの管理費は年間約240万円、30%近く下がった。

「入居当初から住民の間には、管理費が高いのではないかという声がありました。
しかし、管理会社に安くならないか尋ねたところ、
担当の支店長など3人がやってきて、せいぜい5%という答え。
それ以上下げるなら、管理業務を引き受けられないとキッパリ言われました」

 こう語るのは1期目にくじ引きで理事長になったSさんである。
ほかの理事の中には現状のままでいいのではという声もあったが、
Sさんは雑誌で知ったコンサルティング会社に問い合わせ、
簡易査定によって30%近い削減が可能という感触を得た。

 再び管理会社のフロントマンを呼び、コンサルティング会社の担当者同席の上で、
近隣の同じ売主のマンションと比べて、管理費の単価はどうなのか質問してみた。
すると相手は無言のまま。
さらに、売主にとっては最上位ブランドで分譲価格の高いマンションだったので、
「その分、管理費も高くしているのでは」と突っ込んで聞くと、なんと「はい」という返事だった。

 この頃にはほかの理事もおかしさに気付き、Sさんたちは他社に見積もりを依頼。
リプレイス(管理会社の変更)の可能性が出てきたことで、
管理会社は「続けさせてほしい」と態度を一変させた。

 こうして入居から半年で、引き下げが実現したのである。
同時に、管理費削減の結果、管理費会計でほとんど使われることになっていた
駐車場使用料の65%を修繕積立金会計に組み入れることができ、
将来的に4.7倍に値上げせざるを得なかった修繕積立金が、
1.3倍の値上げで済むことになった。

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■ただ「安くしてくれ」では
 うまくいかない

マンションの所有者が毎月支払う管理費の大部分を占めるのが、
管理会社に支払う管理委託費だ。毎月定額が一般的で、
最初の設定のまま何年もそのままということが少なくない。
分譲時の設定が割高なケースも多く、管理委託費の見直しはなるべく早いうちに行いたい。

 ただ、管理委託費の見直しが可能だとしても、やり方を間違えると逆効果だ。
たとえば、どの項目でどれくらい安くできるか根拠も示さず、
ただ単に「安くしてくれ」と言ってもうまくいくはずがない。
「一生懸命やってます」「これ以上は無理です」などとフロントマンの泣き落しに合い、
総額の5%や10%といった感覚的な金額の削減で手を打つことになりかねない。

 あるいは、個別の点検業務や補修工事などを直接、専門会社に分離発注し、
管理委託費を安く抑える方法があるが、不具合やトラブル、
事故が発生すると理事会が処理しなければならず、役員が大変な目に遭うかもしれない。
しっかりした管理会社に手配等を依頼したほうが責任の所在がはっきりするし
、大手の管理会社であれば、最近はコスト面でも大量発注でむしろ安くなる。

 管理委託費の削減はあくまで、管理業務のレベルやほかのマンションと比較して
割高な部分を是正するのが目的だ。「安かろう、悪かろう」では意味がない。
また、どんな業界でもそうだが、適正な利潤は必要。
ギリギリのコストでは安定した業務を期待するのは難しい。
目先の安さだけに目を奪われていると、質を損ねてしまいかねない。

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■管理会社の変更は
 より慎重に行う

管理会社の業務レベルや対応に我慢できないとなれば、
リプレイス(管理会社の変更)という手段がある。

 かつて、リプレイスは主に独立系の管理会社が、
管理組合に積極的に働きかけて行うものだったが、
最近は不動産会社系やゼネコン系の大手管理会社も、
積極的に対応するようになっている。
新築マンションの供給数が減り、親会社から毎年、
新しい受託先が流れてくるという時代ではなくなってきたためだ。

 その証拠に、管理会社が新しく受託するマンションのうち、
既存物件が全体の24.1%を占め、さらにそのうちの62.2%が他社物件、
つまりリプレイスによるものが占める。全体の割合では15%近い。

 ただ、リプレイスはあくまで手段にすぎず、使い方によっては
むしろ管理の質が下がってしまうことがある。
典型的なのが、価格だけで委託先を選ぶケースだ。
いざ新しい管理会社による業務が始まってみると、フロントマンは連絡してもろくに来ない、
管理員は高齢で素人、清掃も適当で、ゴミがあちこちに残っているというケースがある。

 管理会社に抗議しても「それだけ安くしているのだから」との答え。
ほかの管理会社に再度、変更しようとしても、現状の管理委託費では安過ぎて
引き受けてくれるところがない。
いったん下げた管理費をまた引き上げることも、所有者の反対があって難しい。

 こうした失敗をしないようにするには、
それなりの準備と対応が必要なのだ。下の図表を参考にしていただきたい。

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■感情的になるのは逆効果
 管理会社との上手な付き合い方

奈川県湘南エリアで4年前に完成したGマンション(総戸数270戸)では
、分譲当初、管理組合の理事会と管理会社の間で、
ぎくしゃくしたやりとりがしばらく続いた。

「理事会の議事録作成をフロントマンに頼んでも1ヵ月ほどかかる。
共用廊下に私物を置く住民がいるので、注意するよう管理員に頼んだのに
なかなかやってくれない。なんて動きが鈍いんだろうというのが正直な印象でした」

 こう語るのは1期目に理事長を務めたWさんである。
Wさんをはじめ役員はほとんどが仕事勤めで平日は忙しい。
理事会を開くのはおおむね週末だが、時間が合わない人もいる。
勢い、管理会社がなんとかするはずという意識があった。

 その期待が裏切られ、つい感情的な反発が生まれたのである。
理事会のメンバーや住民の中には、フロントマンや管理員に声を荒げたり、
叱責するようなケースも出てきた。

020505Illustration by Tadayuki Sakakibara

「ある日、そういう場面を目の当たりにして、ふと気付いたんです。
感情的になって行動しても、決していい結果を生まないのではないかと。
我々にとって大事なことは、このマンションを快適で住みやすくすることです。
そのためにはどうすればいいか、考えるようになりました」(Wさん)

 理事会としてまず実行したのは、フロントマンや管理員とコミュニケーションを
しっかりとることだった。
たとえば、管理員には毎日労(ねぎら)いの言葉を掛け、時には差し入れもするようにした。
すると、堅い表情が多かった管理員の顔が明るくなり、
業務も心なしかテキパキ行われるようになった。

 フロントマンに対しても、できないことをあげつらうより、
ぜひ力を借りたいということを伝えるようにした。
しかし、なかなか対応が改善されないと見るや、
理事会では管理会社に対してフロントマンの交代を申し入れた。

「我々はマンション管理について素人同然なのだから、
しっかりサポートしてくれる優秀なフロントマンでないと困る。
そうでなければリプレイス(管理会社の変更)も検討せざるを得ないと
文書にして伝えたのです」

 すると、管理会社にとっては重要な位置付けのマンションであったのだろう。
すぐエース級の人材がやってきた。

 2年目、多くの理事が再任する中、今度はアフター点検において
コンサルティング会社を入れたチェックを実施。
表から見えない箇所での塗装のし忘れや廃材の放置などが発見された。
こうした不具合を指摘し、売主に補修を求めたにも関わらず、
アフターサービスの窓口担当者の対応が鈍いと判断すると、
今度は売主に申し入れを行った。
その際、具体的なやり取りはすべて文書などの形で残し、
後で「言った、言わない」にならないよう注意した。

「私もサラリーマンなのでわかるのですが、窓口担当者は自社にとって
不利な判断はなかなかできない。でも、それぞれの役職でできることがあるわけで、
それについては最大限、努力してもらわないと困る。
お互いよりよい結論を求めて交渉するのは、当然のことでしょう」

 交渉の結果、アフター担当には決済権限のある部長クラスが当たることになり、
補修工事はスムーズに進むようになった。
いまやGマンションの理事会と管理会社のフロントマン、
売主のアフター担当者との間では、何かあればお互い率直に
話し合う関係が構築されつつある。

 管理会社との交渉は、どちらが勝ったか負けたかではなく、
WIN−WINの関係を目指すことが重要なのだ。


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http://diamond.jp/articles/-/31409